エア・ウォーター株式会社の発表によりますと、閉鎖循環式陸上養殖事業を手がける株式会社FRDジャパン(さいたま市岩槻区)は、エア・ウォーターなどを引受先とする第三者割当増資を行なうそうです。
引受先は、エア・ウォーター、株式会社 STIフードホールディングス、積水化学工業株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、三井住友信託銀行株式会社、三井物産株式会社、株式会社三菱UFJ銀行。FRDのプレスリリースによりますと、総額210億円の調達について合意したそうです。
また、FRDは別途複数の金融機関とブルーサステナブルファイナンス※1の枠組みを活用した融資契約を締結しました。増資・融資により調達する資金は、7月を目途に着工する予定のサーモントラウトの陸上養殖商業プラント(千葉県富津市、年間生産量3,500トン規模)の建設や運転資金等に充当される予定。プラントの竣工は2026年(予定)、販売開始時期は2027年(予定)。
出資は、エア・ウォーターと三井物産が2022年2月に締結した戦略的提携に伴う取り組みの一環として三井物産を親会社に持つFRDに対して行うものであり、エア・ウォーターの出資額は50億円となります。
漁業においては、地球温暖化や赤潮被害などによる天然魚の漁獲量減少に加え、漁業従事者の減少・高齢化が課題となっています。また、世界的な人口増加や生活水準の向上を背景に、良質な動物性タンパク源である水産物の需要は年々増加し、食料安全保障の観点からも養殖ニーズが高まっています。
一方、国内では海面養殖の適地が限られ、とりわけ年間30万トン規模の消費量があるサーモン類は供給余力に限界を迎える中、安定生産が可能で海洋汚染の懸念も少ない陸上養殖の産業化が世界的に注目されているそうです。
こうした中、エア・ウォーターグループは陸上養殖に不可欠な酸素、水処理材、エネルギー、人工海水などに加え、遠隔監視・鮮度保持・食品分析などの技術を有しており、これらを組み合わせた飼育ノウハウ、消耗品の安定供給、養殖プラントの設計から設備の運転、メンテナンスまで一貫したパッケージで展開する「陸上養殖プラットフォーム」提供事業に参入したそうです。
FRDは、独自に開発した閉鎖循環式陸上養殖システムにより、サーモントラウトを養殖・販売しています。2018年より運営している実証実験プラント(埼玉県さいたま市、千葉県木更津市=下の写真)では、これまで20世代以上の魚を養殖し、独自の閉鎖循環システムによって理想的な水質環境を維持することで、海に依存しないサーモントラウトの安定生産を実証しました。
天然海水に依存せず、バクテリアを利用した高い水循環率を実現する水処理技術と、豊富な養殖経験に裏打ちされた養殖オペレーションの組み合わせを強みとして、これまで事業性に課題のあった陸上養殖の産業化を実現し、今回の商業プラントを皮切りに、日本を含むアジア圏を中心に大規模プラントを複数展開していくことを目指しています。
(※1)環境・社会課題などを解決し持続可能な社会の構築に資するサステナビリティファイナンスのうち、特に海洋環境や海洋資源等の保全に貢献する事業の資金調達のために実行されるファイナンス
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