7月1日午後に、さいたまスーパーアリーナ内のTOIROで開催されたシンポジウム「新庁舎とさいたま新都心の未来像について一緒に考えませんか」を聴いてきました。
シンポジウムは3部制。1部は、さいたま市の清水勇人市長によるプレゼンテーション「新庁舎整備等基本計画とさいたま新都心将来ビジョンの中間報告」、2部は基調講演、3部はエキスパートによるパネルディスカッション「新庁舎がもたらすさいたま新都心の未来像」でした。
新庁舎の機能や配置は?
第1部では、今年度中の策定を目指しているという「新庁舎整備等基本計画」(基本理念・基本方針、新庁舎の機能、配置計画)や「さいたま新都心将来ビジョン」の説明がありました。
機能については、フリーアドレス(固定の席がなくノートパソコンととも自分の好きな席で働くスタイル)の導入、新たな働き方(ABW、業務内容や気分に合わせて時間と場所を自由に選択する働き方)に対応します(集中ブースなどです)。
また、将来の部課の新設などの組織変更や、非常時(災害時)などに柔軟に対応できるよう、可動式什器の設置などで空間を柔軟に変更できるようにする計画でwす。
展望室、レセプションスペース、習いごとやイベントができるスペース(大会議室)、市民多目的スペースなども設ける計画です。
配置については、(隣接する)さいたま新都心公園側に、イベントなどに使える市民広場および市民利用スペースを配置し、公園との一体感を持たせます。市民広場と市民利用スペースは一体利用が可能のようです。
民間施設については、新庁舎一対に整備する「積層型」よりも、新庁舎と別個に整備する「分棟型」で整備する方向で、民間施設はオフィスの利便性や商業の集客性などから、さいたま新都心駅側(北側)に配置する方向です。
なお、当初はあった、バスターミナルの文字はなく、聞き間違いでなければ、公用車も庁舎の低層部分に配置し、敷地内には緑地空間などを多く配置したいようです(中・長距離バスタは大宮駅前ですね)。
区役所に比べて、本庁舎は市民の来庁の機会が少ないです。こうしたこともあり、「シビックプライド(都市に対する市民の誇り、愛着)」の醸成に資する庁舎にしたいようです。
そして、シビックプライド醸成に資する庁舎にするための施策のようなものが、シンポジウムの2部、3部で語られていました。
ちなみに、今日の話には出てこなかったと思いますが、新庁舎は、おおむね20階程度、高さ90〜100メートル程度のようです。
一方、さいたま新都心将来ビジョンは平成26年に策定しましたが、こちらも今年度中に改定するようです。具体的には、大規模再開発が相次ぐ東日本の玄関口・大宮と一体で、「回遊性」、「固有性(町の歴史みたいなものか?)」、「成長性」を進める取り組みを新たに加えるようです。
回遊性を高める市庁舎、シビックプライドを育む市庁舎
第2部では、東京藝術大学の野口昌夫名誉教授が、中世都市シエナ(イタリア)の「市庁舎と広場の計画性」について講演を行いました。
世界遺産シエナの中心街で市庁舎の横にある「カンポ広場」は世界で最も美しい広場の1つといわれています。
ただ、シエナはかつて、事実上それぞれ独立した3つの町(3つの丘)で構成していたようで、市庁舎やカンポ広場が13世紀とか14世紀とかに作られるまで、市庁舎やカンポ広場のある場所は、町外れの窪地だったようです。公平性を担保するために、そこにあえて作られたようですね。
(浦和、大宮、与野、岩槻でない、さいたま新都心に市庁舎が作られるのはシエナに似ているかもとの発言もありました)。
第3部は、建築家やまちづくり関係者はパネラーとなり、シエナのケースや、それぞれの専門的知見から、新庁舎や新都心に期待することなどを語っていました。
そのキーワードは「回遊性」です。
さいたま市「第3章 さいたま新都心周辺地区の経緯と状況」によりますと、さいたま新都心周辺地区の従業者数は2014年で4万 4,969人(さいたま新都心地区は2万3,091 人)。
また、休日は、さいたまスーパーアリーナで開かれるイベントに万単位の来場者があり、あるパネラーは「いかに回遊性を高メルことができるかが鍵。新庁舎に期待している」と語っていました。
その一つが、広場(けやきひろば、新庁舎の広場など)でのイベントです。
また、新庁舎の広場は、ただのコンクリート床ではなく、イベントがなくても、カンポ広場のように、自然と人が集まってくる広場を作ることを望む声もありました。
「まちの歴史的なリソース(氷川神社、見沼田んぼなど)、隠れたリソースをチェックし、1年間のソフトのプログラムを作ることが大切」と、あるパネラーは話していました(大宮公園のボートなども出ていましたが、浦和のリソースの話が出てこなかったような気がします)。
別の方によると、「最近の新庁舎のトレンドは、都庁のような巨大な広場の設置ではなく、小さな空間を連続して設置したり、(周辺の緑地と一体性を意識した品川区の庁舎のように)周辺とつなげていく」といったものになっているそうです。これが回遊性を高めるのにも役立つようです。
一方、全国の新庁舎を見てみると、庁舎そのものについては、「どこの庁舎も防災拠点機能をはじめ同じようなスペックになっていて、独自性を出せるのは、足元(下層階?)だけ」らしいです。さいたま市の新庁舎で言えば、その足元が、前に書いた広場だったり市民利用スペースだったりするようなので、重要な部分と言えそうですね。
このほか、「建築家として一度は見て見たいというようなデザインを期待している」「見沼田んぼから見たときのデザインを意識してほしい」といった声もありました。
ちなみに、駅からペデストリアンデッキで庁舎まで歩いてこれるようになる可能性もあるようです。
以上のようなものができていくと、前に出てきた「シビックプライド」を育みながら、回遊性が高まっていくのかな、と感じました。
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